記憶、一瞬を引き伸ばす、その1

楽園のあの感じ、目に入るもの全てやさしい、そよぐ風に目を瞑る
秋の道、冷たい何もかもに立ち尽くす、すべてが遠く感じる
軽井沢、闇に浮かぶレストラン、ビーフストロガノフ
旅館に泊まった次の日の朝、冷たい空、曇りの空
オール明けの朝、土砂降りの雨、灰色のコンクリート、新宿
川に浸かって夕日を見た、緩やかな流れとゆるやかな温度、同じ方向を見ていた
清潔なバスターミナル、知らない道路を走る、熱い日差しが差し込む
夜行バス、夜の高速道路新宿付近、綺麗に続く道、しなやかなカーブ
晴れの日、桜上水、自転車、満点の青空に満面の笑みを浮かべる
斜めのベット、明るい部屋、靡くカーテン、日差しが舞う埃を照らす
イルミネーション、新宿のビルの谷間、たいせつな人、濡れたイス、彼は笑顔で頑張るからねって言った
教室、英語の授業、泣き出す彼女、自分の言葉の鋭さを知る
もらった手紙、書いた手紙、あの頃のもやもや、愛しさと憎さ、取り戻せなかった関係性
彼の笑い声、賢さそして冷たさ、この人は孤独を知っている、そう感じたあの目
自転車、流れる音楽、すれ違う時の笑顔、リピート、思い出の曲を決める
恐怖、涙、安心感、涙、大丈夫大丈夫という台詞、貴方の体の温かさ
辿り着いた岸、綺麗な空、そよぐ風、仰向け、こういうのを幸せっていうんだという気付き
腕相撲、ちょっかいの掛け合い、笑顔、匂い、あんたもねって言ったあの教室、篭る光、クリーム色のカーテン
初めて聴く曲たち、モッズヘアーのシャンプーの香り、両隣の背の高い男の人、自分の力以上のジャンプ、天使のような笑顔
・・・・・


わたしの記憶を全て楽しんでやれるのはわたししかいません。
つまり、わたしはわたしの記憶にとって大変貴重な存在なのです。
わたしは、わたしの記憶をひとつひとつ並べて、ゆっくりと味わうことができるのです。
これはわたしにだけ与えられた特権です。