五十嵐隆・生還

「Reborn」の、最初の音たちが耳に届いた瞬間、
ああ私は、この音をまた生で聴けるのを、ほんとうはずっと待ち焦がれていたんだと、
やっとわかって、涙が出た。


どこまでも美しい音楽だった。


五十嵐さんのつくる音楽が、ずっと好きだったけれど、
「生還」の夜、やっと分かったことがあった。


あの音楽は、私の、そしてある種の人間の、心の核そのものだ。
どこまでも暗く、悲しく、切なく、やるせない、うねる感情、諦め、
失うことへの無力感。それは心の核にあるもの。
それらの底に、美しさが流れている。
これ以上美しいものはない、というくらいの、まっしろな美しさが、たしかに流れている。
だから、それをそのまま表した彼の音楽は、私にとっては、なによりも明るいもので、
それは、私の翌日をいつまでも照らす希望だ。私の生きる目的だ。


凄く、嬉しそうな、何をも突き上げる、ドラム。
あの頃のままの、素晴らしく安定した、ベース。
人間、そのものの、歌声とギター。


音たちは、ちゃんと、「生還」していた。