おはなし

友人Aの友人Bが死んだ。友人Cと友人Dは、友人Bのことを知らない。
友人C「あなたは何も言わないのね」
友人D「だってわたしには何を言う権利もないもの」
友人C「権利?権利とかそういう問題じゃなくて、…お悔やみ申し上げます、とか、言わないのね」
友人D「だってわたしは本当に悲しいわけじゃないもの、その人が亡くなって、それは悲しい出来事だと思うし、Aの悲しみも計り知れないな、と思うわ。けれどわたしは、本当に悲しいわけじゃないのよ。Bさんの死に涙できないのよ。ただわたしは、Aが悲しむ姿に胸が痛くなるだけなのよ。でもその痛さは、彼女の悲しみに比べたら、断然軽いものなの。…そんなちょっぴりの軽々しい弔い、それってわたしは失礼だと思うの」
友人C「そうやって貴方は自分の冷たさを正当化するのね」
友人D「正当化というより、これは個人の問題だと思うの。私はもし私の大切な人が死んで、その人を知らない誰かに、お悔やみ申し上げますなんて言われても、まったく嬉しくないもの。ひょっとしたら怒りさえこみ上げてくるんじゃないかって思うわ。つまりね、わたしは、言われたくないから言わないのよ」