本日の一冊

78(ナナハチ)

78(ナナハチ)

つぎはぎのお話。くるくる回るレコードみたい。たまに詰まったりしながらも。繋がって、繰り返される。心地よく、ちょっぴり切ない、何かが決定的に欠けている、ということにおいて満たされている音達だった。


「世界なんて、まだ終わらないというのに、ヒトが世界を終わらせたがっている。と思う」
「終わる」ことなく生き延びてきた物たちに囲まれ、命を終わらせていたのは、いつでも「ヒト」の方だったと嘆息するアーサーにしてみれば、その一行は切実で重く、それでいてまたどこか可笑しくもあったのだろう。笑いをまじえて「まだ終わらないというのに」と繰り返し、「なるほど、そうだ」と私も笑い、笑いながら切実さに引き戻され、「そして、物語もまた」と付け加えたくなった。
 世界なんて、まだ終わらないというのに、ヒトは物語を終わらせたがっている。と思う。
 そして本当にヒトは―つまり私は―ある日、このテーブルの上で、飲み残しのコーヒーをすすりながら簡単に物語を終わらせる。
 世界なんて、まだ終わらないというのに、だ。