本日の一冊
- 作者: 吉田篤弘
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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「世界なんて、まだ終わらないというのに、ヒトが世界を終わらせたがっている。と思う」
「終わる」ことなく生き延びてきた物たちに囲まれ、命を終わらせていたのは、いつでも「ヒト」の方だったと嘆息するアーサーにしてみれば、その一行は切実で重く、それでいてまたどこか可笑しくもあったのだろう。笑いをまじえて「まだ終わらないというのに」と繰り返し、「なるほど、そうだ」と私も笑い、笑いながら切実さに引き戻され、「そして、物語もまた」と付け加えたくなった。
世界なんて、まだ終わらないというのに、ヒトは物語を終わらせたがっている。と思う。
そして本当にヒトは―つまり私は―ある日、このテーブルの上で、飲み残しのコーヒーをすすりながら簡単に物語を終わらせる。
世界なんて、まだ終わらないというのに、だ。