リリイ・シュシュのすべて

リリイ・シュシュのすべて 特別版 [DVD]

リリイ・シュシュのすべて 特別版 [DVD]

何回か見てどんどん心に浸入していく映画。映画を観て→小説を読み→映画をもう一度観た時、この映画を「すごい」と認識した。世界に絶望してしまった星野の苦しみ、世界に見放されてしまった蓮見の苦しみ、世界に溺れてしまった津田の苦しみ、世界に立ち向かう久野の苦しみ、その全ての癒しの対象となるリリイ・シュシュ。田園や青空は泣きたいぐらいに美しく、ドビュッシーの音楽も泣きたいくらいに美しい。津田が落ちて、星野が叫び、少女が少年に切れて、音楽が最高潮に達した時に、悲しすぎる世界が沸騰する。蓮見は星野の苦しみには気づかずに、星野を世界から見放す。どうしようもなく悲しくて、どこまでも苦しい物語。それでも世界は続いていって、傷は少しずつ癒えていくのかもしれないけれど、失ったものはもう永遠に、戻らない。それが、ものすごく、切ない。