引用、その3

asps2006-03-30

「そうだね。物語というものがすっかり語られて一つの形を取るためには、たぶん相当量の幸福が必要なんだよ。語り手は絶対に必要なんだから。ぼくたちがたまたまアンジェリーナの館に暮らしてその幸運を持ち合わせていたので、それで物語の方が寄ってきて、ぼくたちを利用した。物語っていつでも機会をうかがっているものだから」

マシアス・ギリの失脚/池澤夏樹/新潮社)