ひとりのげんかい

asps2006-03-09

「ねえベイベー、君に掬えなかったその青い透明、僕が掬えるとして、柔らかな風は吹くと思う?」
「わからないわ、残念ながら。私には、貴方の言っていることが、全くわからないのよ」
「通じ合う心に涙する、すれ違う考えに涙する、ねえ君、一体いつまで、そうしていられる?僕は自分に陶酔している。ここはあたたかいよ」
「貴方はいつまでそうしていられるの?」
「わからない。いつか底が抜けるかも。そうして僕は落ちるかも、もしくは僕は取り残されるんだ、けれど今はね、こうやって、浸かっていられる。ここは、とってもあたたかいんだ」
「じゃあ私、お先に失礼するわ」
さよなら、そう言って彼女は僕の前から去っていった。僕は喪失に涙した。


それきり。今でもここは、あたたかいよ。


でも本当は、わかってる。僕は何にも、手放せないでいるんだ。