麦の海に沈む果実

麦の海に沈む果実 (メフィスト・クラブ)

麦の海に沈む果実 (メフィスト・クラブ)

幻想的な学園ミステリー。
主人公が、過去を取り戻すまでの話。
私はこの話がどうにも好きで、もう何回も読み返しているのだけど、読む度に違った印象を受ける。
すごく怖くも、悲しくも、切なくもとれる話。
胸の中のつつかれるとチクリと痛む部分を、無意識につついてくる。
少年少女の青春の形が各所にちりばめられていて、けれどその核を成すのはひやりとした冷たいもの。
したたかで、寂しくて、いとおしい人たちが時を流れていく。
物語の中に出てくる詩と、物語の最後の文章が、たまらなく好きです。
恩田陸さんの書く学園ものは濁りがなくて、でもその他のものがいっぱい詰まってるから、深いです。
六番目の小夜子ネバーランドもあわせておすすめです。